目ずらし記事

mezalaのブログ

「夢告鳥」を聴く

めずらしきこと。
YAHOO!知恵袋に次のような質問が出ていた。

昔、あみんの「待つわ」をテーマにしたラジオドラマがNHKFMで正月に放送されたことがあるんですが。
悲しい話で凄く印象に残ってます。このラジオドラマに関して情報くれませんか?
中年男が学生運動が盛んな頃に付き合ってた女性に会いに行こうとしてやめた話しですが悲しい話で凄く印象に残ってます。

この質問に対して,回答者はウチの「ラジオドラマ資源 1983年」の「夢告鳥」の項を紹介してくれており,これはまさにドンピシャの回答であったのだが,何故か質問者は否定して次のようにコメントしている。

私も検索でそれ見つけましたけど、FMNHKの中なので間違いなく違うと思います。

ちょっと相当猛烈に意味不明だが,それはともかく,実は「夢告鳥」には重要なキーワードがある。それが「雛祭り」だ。おそらく質問者はそのことを記憶しておらず,正月に放送されていた他の特集ドラマの何かと混同しているのであろう。無理もない。なにせ30年ちかく前の放送である。自分だって改めて聴かなければストーリーすら忘れているのだから。

夢告鳥〜「待つわ」
佐々木守:脚本,ミッキー吉野:音楽.
大和定次:効果,滝沢真澄:技術,並木雅之:演出.(NHK東京)
出演:林隆三かとうかずこ,泉晶子,金子成美,福田伸明. 演奏:あみん(vo).
初放送:1983-03-04{FMステレオ歌謡ファンタジー}
ステレオ 45分
雛祭りを過ぎても娘はお雛様を片付けるのを嫌がっている.男はふと学生時代に雛祭りに招かれたことを思い出し,彼女の故郷の京都を訪ねることにした.京都に住む別の同級生と京のまちを散策しながら学生運動が盛んだった時代の昔話になり,彼女が小泉八雲の物語を語っていたことを聞く.その物語とは,一度は捨てた妻を訪ねて故郷に戻り,夫の帰りを待ち焦がれた白骨死体の妻と一夜を語り明かすというものであった.男は彼女の自宅近くまでは行ったものの,結局自分の思いが身勝手なものだと思い直して引き返す.その日のうちに帰宅すると,女子学生が訪ねてきたことを妻が告げる.さらに京都の友人から電話があり,訪ねようとしていたその時に彼女が息をひきとったことを告げてきた.
ここに登場する小泉八雲の物語(原型は中国の志怪である)をモチーフにしたラジオドラマは他にもある。大久保昌一良の脚本による特集オーディオドラマの「怪し野」(2003-05-04)である。出演者に平幹二朗篠田三郎毬谷友子佐藤慶を迎える豪華な作りで文化庁芸術祭の優秀賞を獲得しているのだが,個人的には少し底の浅さを感じた。これはかつての名作「あだしの」をかなり意識しているのではあるまいかと考えたのだが,「あだしの」の方がドラマの質は数段上だと思う。ちと言葉が過ぎた。
一方,佐々木守の脚本は,45分のドラマのなかに,学生運動,京の観光案内,怪談をちりばめて濃密にまとめあげており,見事である。歌謡ファンタジーのシリーズは一般に芸術的評価の対象にならないところがあるが,「夢告鳥」は非常によくできた脚本だ。