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mezalaのブログ

「吼えろ」を聴く

めずらしきこと。
1月9日は,宇野重吉の忌日である。

宇野重吉のラジオドラマ出演はそれほど多くはないが,いずれも深い印象に残るものばかりである。その中でも文化庁芸術祭において奨励賞を獲得した「吼えろ」を聴いた。

吼えろ
安部公房:脚本,芥川也寸志/山本聡:音楽・音響構成.
[松田竜作]/他:効果,[酒井清]:技術,山内久司/他:演出.(朝日放送
出演:宇野重吉,井川比佐志,佐野浅夫山岡久乃小沢栄太郎,若宮忠三郎,矢野宣,市原悦子
初放送:1962-00-00, 再放送:1985-03-19{R1日本の名作ドラマ3}/1985-03-27{FM日本の名作ドラマ3}.
モノラル 40分
芸術祭奨励賞受賞.

内容:老いた獅子と虎を闘わせて猛獣の王様を決めようとする見世物を興したが,猛獣たちは格闘しようとしない。思い余った興行主は…。

先日,何かの番組で,最も強い猛獣はライオンかトラかという企画を放映していたが,要するに引き分けという評価だった。草原で腕力にものをいわせて集団で組み伏せるライオンと,密林で息を潜めて獲物に近づき電光の如く襲いかかるトラを同じ土俵で評価することに無理があるのだが,個人的にはなんとなくトラの方がタイマンでは強そうな気がする。ライオンは寝てる君のイメージしかないからだろう。

さて,宇野重吉について浅薄な説明は必要ないだろう。日本演劇史上に重要な足跡を残す劇団民藝の創設者であるが,晩年においては宇野重吉一座を立ち上げて「ドサ回り」を行い,プロレタリア芸術の原点に還るような活動を行ったことも特筆される。

1976年の夏,学生だった自分はサークルの仲間たちと浜名湖の出口にあたる弁天島に海水浴に行って,調子に乗って沖へ流されパトロール船に救助されたことがある。泳いでももがいても沖に流されヘトヘトになって助け上げられ説教を食らったあと,すぐそばの小舟で宇野重吉が釣りをしていることを教えられた。ほとんど朦朧とした意識のなかで「ちいさな爺さんだなぁ…」などとバチ当たりなことを思ったものだった。このとき,まだ六十ちょっとくらいのはずである。

手持ちの録音から,宇野重吉出演ラジオドラマのリストは次の通り。