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mezalaのブログ

「やまびこ」を聴く

めずらしきこと。
1月31日は,女優・加藤道子の忌日である。
森繁久彌とのコンビで50年ちかくの長きにわたって出演した番組「日曜名作座」は,日本放送史に残るお化け番組である。そのほか非常に多くのラジオドラマに出演し,高く評価された演技により多くの賞を獲得している。
それらのうち,戦災孤児の問題を扱い,全国の聴取者の感動の涙をさそった「やまびこ」を聴いた。

やまびこ(再制作)
三好十郎:脚本.
赤坂順之介:演出.(NHK東京)
出演:加藤道子,山田清,渡辺富美子,降旗文子,木下清,伊島幸子.
再制作:1965-09-19{芸術劇場}/1982-08-01{ラジオ名作劇場}/1984-01-02,[初放送:1947-12-05].
モノラル 60分
山村の伯母に引き取られたクニオは,いつもぼんやりとしていてオトセを苛立たせる。クニオはいつも記憶のなかに母の面影を追い求めており,山に向かっては母を呼ぶ日々を過ごしていたのである。ある日,クニオは自分を迎えに来るために村はずれの道を歩いてくる母の姿を認める。オトセは迎えに来たクニオの母に,一人前にするためにどれだけ厳しく育てたかを話してきかせるが,3年にわたってわが子と思って育ててきたクニオを手放すのかとひどく落胆する。……
ふと目を覚ますと,帰りが遅いのを心配して探しに来たオトセが顔をのぞき込んでいた。クニオはオトセの厳しさに隠された本当の優しさが身にしみてくる。そしてクニオは帰り道,オトセを「おっかさん」とごく自然に呼んでいるのだった。

厳しい農婦を演じる加藤道子の演技は,臨場感と迫力と厳しさ優しさのかたまりで,まさに神がかった表現力である。このような演技者がかつて存在したというだけでも,日本は世界に誇れる文化人を輩出したと胸を張ってよいと思う。
なお,クニオを演じた木下清は,この「やまびこ」再制作の数年後に少年ドラマシリーズの「タイムトラベラー」で未来人ケン・ソゴルを演じ,全国の少年少女を熱狂させた。子役時代の演技も素晴らしいものであるが,残念ながら鮎川想氏によれば木下は20代で役者を廃業したそうである。

手持ちの録音から,加藤道子出演ラジオドラマのリスト。