目ずらし記事

mezalaのブログ

「小笠原からあなたへ」を聴く

 めずらしきこと。

 10月21日は,詩人で脚本家の川崎洋の忌日である。川崎洋の本によるラジオドラマは数えきれないほどで,その代表作は「川崎洋ラジオドラマ脚本選集」に収録されている。
 収録内容は以下のとおり。
 虎と東京(1958), 終点(1961), カエル行状記(1962), 乞食に弟子入りした話(1964), 一つの木・千の木(1966), 手に葉ッパ(1968), 小笠原からあなたへ(1968), 緑の太陽(1969), 人生相談(1970), ジャンボ・アフリカ(1970), 途中(1974), 湧然の柵(1975), 東京の空(1984), トシオの船(1984), 戦争にソプラノはいらない(1987), うるんだ美女(1987)。
 それらのうち,小笠原の悲劇をテーマに問題提起し,文化庁芸術祭で大賞を受けた「小笠原からあなたへ」を聴いた。

小笠原からあなたへ
川崎洋:作,山本直純:音楽.
玉井和雄・山崎鉄雄:効果,峰岸宏・槇本繁:調整,鈴木久尋・雉本俊一:演出.(文化放送制作)
出演:ジュリアン・ホランズ;小笠原父島の人々;他. 演奏:新室内楽協会.
初放送:1968-11-30{明治百年記念番組},再放送:1987-03-01{ラジオ名作劇場・にっぽんの名作ドラマ・シリーズ 1}.
モノラル 40分
明治百年記念・昭和43年度芸術祭大賞受賞

 「オガサワラって言われると,なんだかよその場所みたい。ここは,Bonin Islands。」
1968年,小笠原諸島は日本に返還されようとしていた。島に住む欧米系住民の子どもたちは,突然「返還」という状況を突き付けられ混乱させられる。「日本に返還されてうれしい?」「日本って素晴らしい国でしょう?」などという答えられない日本人の問いかけにもうんざりだった。彼らは日本人が入植する以前から小笠原に住み着いていた欧米系住民の子孫なのである。
 「小笠原が返還になった。あなた達は嬉しい。それはわかります。でも返還になったのは昔の小笠原だけではありません。わたしたちが日本人になって嬉しい,……早くそう言えるようにしてください。今,あまり上手に自分の気持を日本語で言えないわたしたちのことを,どうぞ考えてください。小笠原からあなたに,それをお願いします」
 彼らの世代は完全な英語教育を受けたため,返還後日本語になじめずに米国等へ移住した者もいるという。

 手持ちの録音ではごく一部になってしまうのだが,川崎洋の作品は次の通り。

 このリストにはない,1970年文化放送制作の「ジャンボ・アフリカ」を聞いてみたかった。