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「鉄の伝説」を聴く

 めずらしきこと。
 今日は俳優・森塚敏の忌日である。森塚敏は数多くのラジオドラマに出演しているが,その中でも昭和48年度に文化庁芸術祭で大賞を受賞したステレオドラマ「鉄の伝説」を聴いた。

鉄の伝説
宮本研:脚本,広瀬量平:音楽.
大和定次:効果,伊東孝久:技術,千葉守:演出.(NHK東京局制作)
出演:森塚敏左時枝,朝比奈尚行,宮本研,木村一.演奏:アンサンブル・シャルマン.
初放送:1973-11-02{芸術劇場},再放送:1975-01-03{ドラマ}/1978-07-01{ドラマ}/1988-12-18{ラジオ名作劇場}.
ステレオ.55分.
昭和48年度文化庁芸術祭大賞.再放送時は短縮版(45分).

 蒸気機関車のさよなら運転の最終便に老人・青年・少女が乗り合わせていた。この線には戦時中,米軍艦載機の機銃掃射を受けて若い機関助士が死んだという出来事があった。優秀な機関士であれば鉄輪の空転を起こすことなくトンネルに逃げ込めたはずだ…という悔いを残す老人はそのときの機関士であった。そして,この夜の機関士は死んだ機関助士の弟である。夜間,濃い霧の中を最終便は急勾配を乗り越えながら定時で運行してゆくのだった。
 鉄の時代の終わり…,そして何処へも行けない汽車…,だが鉄は土に還ることができる…。老人は最後の運転を終えた汽車に無断で乗り込み,絶望的な汽笛と鉄の軋みを響かせながら暴走させる。

 森塚敏劇団青年座の旗揚げに参加し生涯劇団を支え続ける一方で,相当な数の放送ドラマに出演している。
 自分のような世代にとって,盟友・成瀬昌彦とともに出演した少年SFドラマのバイブル「ウルトラセブン」の第43話「第四惑星の悪夢」におけるロボット署長役は,ほとんどトラウマと言ってよい衝撃を与えたものだった。