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mezalaのブログ

「あたま山」を聴く

 めずらしきこと。及川ヒロオ
 9月25日は,俳優・及川ヒロオの忌日である。 
 及川ヒロオは決して主役をとらない俳優だった。役どころというと,気弱な猟師,陰湿な官憲,寒村の小作人,東北からの出稼ぎ者,などなど渋いというより少し情けない役柄ばかりである。生涯,そのような役に徹したというのは驚くべきことである。
 さて,しかしながら主役がないとなると,どの出演作を紹介したものか非常に悩ましいのである。手持ちの録音のクレジットで最も早く名前が挙がってくるのは「キャロル」の後編で,主役の増田未亜の次となっているが,悪魔の手下で魔族の隊長格というところ。あまり及川らしい役どころではない。
 ここはやはり陰湿な官憲役の「あたま山」を聴くこととしたのである。

あたま山
佐藤竜太:脚本,村岡実:音楽.
大和定次:効果,雑賀浩明:技術,伊神幹:演出.(NHK東京)
出演:園田裕久,新村礼子,桑山正一,及川ヒロオ,大久保正信,桐原文夫,前沢迪雄,辻しげる,峰田友代,石黒正雄,三川祐造,高橋徹,大友町子,香坂誠.
初放送:1974-01-12,再放送:1989-09-17{ラジオ名作劇場}.
モノラル 55分.
 「あたま山」はあまりにも有名な落語のお題なので,特別説明は必要ないと思われるが,時代背景を検閲の横行する戦時中とし,劇中劇として翻案したものだ。上演中に中断させて脚本の訂正を求める陰湿な官憲役をこのうえなく陰険に演じている。(笑)
 手持ちの録音から,及川の出演作リスト。