目ずらし記事

mezalaのブログ

「星ふる夜に」を聴く

めずらしきこと。
このところの大きな話題だったアイソン彗星は蒸発・消滅したらしいということで,さぞかし俄天文ファンをがっかりさせたことであろう。それはともかく,

11月29日は,俳優・下元勉の忌日である。
自分が下元勉を意識したのは,高橋洋子主演の連続テレビ小説北の家族」(1973)での主人公の父親役だった。実家で友禅の職人として再出発しようとするが,老眼が進んでいて細かな模様を描くことができなくなっていたというような,すでに老人のような役だった。優柔不断な父親という役回りで,自分の母は下元勉を嫌い文句しか言っていなかったが,自分には心にしみる演技だと思っていた。どうも自分の母は,俳優と役の演技が区別できないようである。今思えば,北の家族の出演者の豪華さに渋いベテラン俳優も霞んで見えたというところだろうか。
ラジオドラマ「星ふる夜に」はリアルタイムで下元勉の声の演技に触れた最初のラジオドラマだった。退官講義を終了した夜に天文学教授の心をちくちくと刺し続けてきた過去の2件の死亡事件の回想と,奔放に現代を生きる息子や娘に父親らしい接し方をしてこなかったことへの悔恨をからめて,浮世離れを装いながら社会に対する積極的な無関心に徹する学者の孤独を描く秀作である。脚本は既に作家として一流の評価を受けていた三枝和子の書き下ろしだ。一流の作家がラジオドラマを書き下ろすのがそれほど珍しくない時代とは言え,珍しい視点からラジオドラマに表現の可能性を追求してもらうことは大歓迎なのである。
手持ちの資料から,下元勉出演ラジオドラマの一覧。