目ずらし記事

mezalaのブログ

マイナス・ゼロ再読

めずらしきこと。

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

ここひと月ほど,鼻の調子がひどく悪かった。鼻の奥に痰のような粘り気の強い鼻汁がとどまってしまい,唾を飲んだりするタイミングで鼻の穴が塞がった側の耳がつまったようにピーンとしてしまうのである。
地元には耳鼻咽喉科が少ない上に,夏の終わりは水遊びで外耳炎になった子供がやたら多いと決まっているので,相当な混み様であることは想像に難くない。遅番などの数時間のズレ勤務ではとても時間が足りないに違いないのだ。
相当の待ち時間を覚悟し,先月亡くなられた西澤實氏が脚本を書いたマイナス・ゼロの原作をもう一度読み直したいと考えていたので,鞄に文庫本を押し込んでいざ耳鼻咽喉科へ。
今日のところは最初の章くらいを読めば良いと思っていたのだが,10時前の受付で結局診察が終わったのは午後2時だった。いくら休み明けの月曜日とは言え,なかなか厳しい。診断結果は予想どおり副鼻腔炎,所謂蓄膿症である。風邪をひいたときによく処方される抗生剤やら点鼻薬やらで一週間ほどで改善するということだが,せっかくの夏休みのほとんど丸一日を費やしてしまった疲労感がある。
だが,その待ち時間で500ページ超の文庫本のほとんどを読むことができ,帰宅してからすべて読みきった。
時間のパラドックスに記憶喪失オチをからませた展開は強引という評価もあるかも知れないが,昭和初期の時代考証に基づく非常に細かな描写と,大胆で奇想天外な結末は数ある時間旅行ものの中でも傑作中の傑作だと改めて思う。