めずらしきこと。
新聞を読んでいた娘が「鬼太郎の目玉おやじの声優さんが亡くなった」と教えてくれた。目玉おやじ役を代表とする超個性的声優の田の中勇さんが死去されたのである。40年もの間,同じ役を続けたことは幸福であり,また不幸だったのかもしれないという思いが脳裏をかすめた。実際,妖怪の「目玉おやじ」の方がいなくなったというイメージに脳を占領されてしまっているのだ。
田の中勇さんご本人は,声優だけにメディアへの露出は多くないが,これほど知られた声もないだろう。しかしそれ故に目玉おやじ役というのは相当な負担だったのだろうと想像する。
居間の電算機の背後の壁に「なまけ者になりなさい」の色紙が掛けてある。鬼太郎の作者である水木しげる氏の傘寿を祝って出版された「水木しげる80の秘密」の初版限定付録を額に入れたものである。この言葉の真意は,若いときは我武者羅に働いても,中年以降は唯々諾々と仕事を受けるのではなく上手に力を抜く余裕がないといい仕事はできないと戒めたものだ。
田の中さんが仕事に手を抜く余裕がなくて寿命を縮めたなどとは言えないが,もっともっと怠けて長く続けて欲しかったと思う。
心からご冥福をお祈りします。