目ずらし記事

mezalaのブログ

名もなき野草(屁糞鬘)

めずらしきこと.
 「雑草という草はない」と,かの牧野富太郎博士は言ったそうだ。
 逸話の類なので本当に言ったかどうか,それはともかく,雑草と言うか野草の名前なんてふつうは簡単にわからないわけなので,名も知らぬ草というところだろうか。
 以前から少し気になっていた蔓性の雑草があった。葉の形や走出枝(ランナー)の特徴から「屁糞鬘」に酷似しているのだが,「ヘクソカズラ」なる不名誉な名称からはほど遠い可憐な花が付いていなかったために,ずいぶん図鑑なども見たのだが特定には至らなかったのである。
 所蔵している図鑑類は,北隆館の『原色牧野植物大圖鑑』と山と渓谷社の『日本の野草』で,その特徴からずっと調べていたのだが,他の場所に生えている屁糞鬘は花が付いているにもかかわらず,グラウンドカバーとして植えている玉龍の中に根付いてしまったこの蔓性植物には花が付いていなかった。
 その走出枝は玉龍の葉の下を地面に沿ってまっすぐ進み,ところどころの節から根を下ろして「中継基地」とするのである。元の根を引き抜いても,途中の基地が残っていればそれを「要塞」としてさらに繁殖してゆくのである。走出枝は特別何かに巻き付くということもなく,建物などの障害物に沿ってずんずん進んでゆく。蔓性のくせに何かに積極的に巻き付くということをしないのだが,ところどころで例えば犬走りから突き出ている光ケーブルのパイプなどに強く巻き付いたりするのである。
 長いこと図鑑とにらめっこをしたり,Googleレンズに照らしてみたりしていたのだが,今朝突然,例の白い花の蕾を付けはじめたことに気付いた。目出度く屁糞鬘と特定できたわけなのだが,何ともすっきりしない。なぜこれまでこの場所のものに限って花を付けなかったのか……。
 謎である。

 ということで,植物図鑑など持っているにもかかわらず,意外に自宅周辺の植物の名称を知らないという現実に気づいたので,今後はできるかぎりちょっと迷惑な雑草を中心に調べてゆこうかと思ったのである。