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mezalaのブログ

コダックの倒産

めずらしきこと。
米国のイーストマン・コダック社が倒産した。負債総額は5200億円になるという。

コダックは写真フィルムの生産において全世界的な影響力を持っていた。デジタル時代に乗り遅れたとは言っても,映画産業は依然としてフィルムによる配給をしているわけだし,そもそもデジタルカメラを最初に製造したのもコダックだった。どれほど放漫経営だったのか想像に難くない。オリンパスなど足元にも及ばないほどのものだったろう。過去の業績に胡坐をかいて会社を潰した経営陣に対して,かつてさんざんコダックのフィルムに世話になった身としては複雑な思いである。
40年前,高性能な白黒フィルムと言えば,ASA感度400のTri-Xであった。当時は高感度フィルムの代名詞であり,ストロボの焚けない暗いステージ写真などの撮影においては,ASA1600として撮影して長時間現像液に浸す増感現像を施すなどしていた。粒子は荒れたが,暗所において撮影する唯一の方法だった。
その頃,ポール・サイモンが「僕のコダクローム」という曲をヒットさせ,富士フィルムが提供する番組においては放送させないという事件もあったことを思い出す。

最初に就職した会社ではムービーカメラマンをやっていたため,コダックの主催する研修に行かされた。一緒に参加していた人の多くは,仕事が暇なので参加したと言うアニメーション制作プロダクションの社員や映画会社の撮影部隊だったりして,ずいぶんと刺激も受けたし,研修の内容も色彩の基礎をみっちりと仕込まれた。最も目からウロコだったのは,白黒写真においてカラーのフィルタを駆使することの概念だった。このときのYMC(イェロ・マゼンタ・シアン)とBGR(青・緑・赤:最近はRGBと並べるのが普通だ)の補色関係による光線の透過色について叩きこまれたことは,現在に至っても非常に役に立つ知識となっている。
この研修でもらったのが,タイピンだった。「Training Makes Difference」(トレーニングで差をつけろ!)と刻まれた言葉は座右の銘にもなっている。しかし今の時代,単に職人的な切磋琢磨だけでなく,情報戦を制するものが勝者となるということを実感して,少々うら寂しい気分になるのだ。