目ずらし記事

mezalaのブログ

「昔、こどもだったあなたに」を聴く

めずらしきこと。
1月11日は,劇作家・矢代静一の忌日である。
矢代静一は敗戦直後のまだ二十歳になるかならないかという頃,もちろんまだ早稲田の学生だったわけだが,俳優座の文芸部に属していて「ラジオ実験室」のラジオドラマを書いていたという。当時は占領軍のCIEという放送の検閲を行う機関があり,元々社会派でないと思っていた矢代は検閲に対して非常に抵抗があったらしい。放送台本の検閲に腹を立てた矢代は「ハタラキバチ」というドラマを戯曲化し,雑誌「近代文学」に発表する。
とは言っても,矢代は放送を愛し,ラジオドラマの脚本をたくさん書いた。台詞を大事にした矢代は,後年,テレビドラマよりもラジオドラマの方が好きだと述べている。
オリジナルの脚本よりも文芸作品の情感あふれる脚色の方が多いのだが,今日は特にオリジナルの「昔、こどもだったあなたに」を聴いた。

昔、こどもだったあなたに
矢代静一:脚本,助川敏弥:音楽.
大和定次:効果,箱崎敏行:技術,竹内日出男:演出.(NHK東京)
出演:小山田宗徳,伊藤幸子,前沢迪雄;三十人会.
初放送:1969-04-26{FM芸術劇場}, 再放送:1969-10-26/1973-08-03{ラジオドラマ名作選}/1989-04-09{R2ラジオ名作劇場}.
モノラル 40分

純粋な心を持つ踊り子と現実主義の男.女は会うたびに男に騙され,それでも待ち続けていたが…

純情可憐な少女を伊藤幸子が好演している。また,生きることにも退屈しきっている男を演じる小山田宗徳も,ドライでスレていながら絶望的な哀愁を漂わせる役になりきっている。いずれも他のキャストは考えにくいほどだ。

手持ちの録音から,矢代静一が脚本・脚色を担当したラジオドラマのリストは以下のとおり。

未聴のオリジナル作品:是非聴いてみたかった