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mezalaのブログ

一葉忌に「たけくらべ」を聴く

 めずらしきこと。
 今日は一葉忌である。
 ラジオドラマのコレクションから「たけくらべ」を引っ張り出して聴いてみた。これは1968年1月1日に明治文学特集の第1回として放送された録音を1983年5月1日のラジオ名作劇場で再放送したものである。データは以下のとおり。

たけくらべ
樋口一葉:原作,福田善之:脚色,三宅榛名:音楽.
初放送:1968-01-01(明治文学特集 1),再放送:1983-05-01(ラジオ名作劇場) 60分
出演:渡辺美佐子(na);二木てるみ中村米吉(五代目歌六),池田秀一,小池正史,松山省二(政路),桑山正一,鈴木光枝,富田恵子,於島鈴子;劇団こまどり,劇団若草
川崎清:効果,箱崎敏行:技術,平野敦子:演出.
 渡辺美佐子の語りと,瑞々しい子役(…と言っても18歳前後)中心のドラマが螺旋のようにからみ合って,名作の持つ趣をこわすことなく展開してゆく。脚色の福田善之の大変な苦労を,若い天才役者たちがよく表現した傑作である。このような歴史的名演はぜひともCD化してほしいし,ネット配信で多くの人に聴いてほしいものだ。
 美登利役の二木てるみは当時天才子役として多くの少年を魅了していたし,信如役の中村米吉(現在は五代目中村歌六で歌舞伎の重鎮)や正太郎役の池田秀一ガンダムシャア・アズナブル役で知った人も多いだろうが次郎物語をはじめ少年ドラマの常連だった)も原作の雰囲気をこよなく美しく表現している。近ごろのやおい好きな女子が聴いたら骨までとろかされそうな艶っぽさである。
 子どもでありながら…いや子どもであるからこそ…吉原という土地や家の職業に縛られた宿命から逃れることのできない悲しみを見据えていた一葉の思いは,現代に至ってもさして変わっていない社会構造を重ねて,さらに悲しみを深くする。