目ずらし記事

mezalaのブログ

毒虫に刺される

 めずらしきこと。
 昨日,急に仕事で遅番をやることになり,朝時間ができたので鬱蒼としてきた薩摩芋の周辺の草取りをした。薩摩芋を植えると葉が茂って雑草が生えなくなると聞いていたのだが,現実は逆で,薩摩芋の葉に陽が当たらないほど雑草が生い茂っているのである。

 初めて5分も経たないうち,草を掴んだ左手の親指に棘を刺したような激痛が走ったので,慌てて軍手を外してみた。ちょうど石榴の真下で,石榴の鋭く尖った棘の生えた枝を掴んだと思ったからだ。以前,同じように掴んだ枝の棘の先が折れて指の中に残り,老眼が進んだ目で棘を取り去ることが非常に難しく,しばらく不自由したことがあったことを思い出した。
 しかし軍手を外して見ても,棘のようなものは見当たらず,痛みはさらに激しくなってくる。これは虫にやられたと思ったので,家の中に戻ってキンカンを塗りつつ,指を見た。普通,蜂に刺された場合は刺された一点が白くなっているものだが,刺された箇所と思われた第一関節付近に何も見当たらず,何となく全体的に腫れてきている。どこを刺されたのか,まったくわからないのだ。
 一度,現場に戻って刺した張本人を探したのだが,どうも見当たらない。どこを刺されたのかもわからないし,誰に刺されたのかもわからないのである。「くそっ,コロス!」と思ったのに残念無念である。


 職場に行く途中のドラッグストアで母に頼まれたタフグリップ65gと,液体ムヒアルファEXを買った。この季節,自宅のキンカンを持ち出す訳にもいかない。液タイプを買ったのが失敗だったのか,ひんやり感は強いもののあまり効いている感じはせず,どんどん腫れてきてしまった。親指が腫れてもキーボードは打てるので仕事にはあまり支障がなかったのが救いである。遅く帰宅後,風呂に入って湯の中で温め,すかしてみて第一関節の皺の間に白い点を確認するに及び,ようやくこれは蜂に違いないという結論となった。
 ひと晩たってみると,腫れは最高潮である。指の背の皺は伸びきってツルツル・パンパンになっている。指紋も伸びきっているかと思われるほどツルツルなのだ。左右の親指を揃えてみると,太さも皺の様子もまったく違う他人の指のようになっている。昼近くに墓参りに行く頃には,指の腹の関節の深い皺が伸びきって,普段は凹んでいるところが逆に出ているようにも見えた。先日新聞で読んだ,オキアミを捕食した鯨が喉の畝を拡げて膨らませている様子が頭に浮かぶ。腕を下ろしてぶらぶらさせていると遠心力でズキズキするので,ときどき麦藁帽子のつばを持っていた。
 午後は,暑いので昼寝をしていると,心臓のあたりが苦しかった。今頃アナフィラキシー症候群にやられては敵わないと思ったが,どうやら胸を開いて寝ていたせいのようだった。腫れた親指は付け根あたりがゾウアザラシの皮膚のように膨れて,大きな皺を形成している。今はまだ痛みが勝っているが,その奥に猛烈な痒みが控えていると思うと,ひどく憂鬱なのである。