めずらしきこと。
春の雪だ。それも41年ぶりに遅い雪なのだそうである。
春の雪といえば,自分の小学校の入学式の日も大雪だった。田舎は学区が広い。既に止んでいたとは言え,膝まで埋もれる雪の道を2キロちかく母と歩いて行った。途中の川沿いの道では河岸との境もおぼつかなく,川に転げ落ちる恐怖にさいなまれながら歩いて行ったのだった。
ひどく冷えてしまった自分は,寒くだだ広い講堂での式の途中で小水を漏らした。父は妙に半ズボンを履かせるのが好きで,そんな雪の日にもかかわらず半ズボンを履かされていた。そのズボンの下に履いた白っぽいタイツに幾筋ものじぐざぐの川が一瞬のうちに広がり,川と川とが交わって流れた。
口に出したか出さなかったのか,こんなトンマな台詞をはっきりと覚えている。
しまった!
なんとも情けなく寒い雪の入学式だったのである。