めずらしきこと。
- 作者: 藤水名子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/11
- メディア: 文庫
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コバルト文庫が数冊。そうか,そっち(何処)の方向に行ってしまったのかと思いきや,歴史小説も何点か書いていることを知る。そのうちの1冊である。(考えてみれば,このジャンルで一大グループを形成している人たちは伝奇系だったし,歴史小説との境もあるような,ないような…。)
さて王昭君といえば,従来は宮廷画家に賄をしなかったために容色を落として描かれたことで遠く塞外の異民族に輿入れさせられた悲劇の宮女という,絶対的な漢人の観点しかなかったように思う。だが,おそろしく退屈な宮廷生活よりも自由な生き方を望んだ奔放な女性として描かれ,宮廷画家の方も王昭君の不思議な魅力にとりつかれて他の後宮の女性たちとは違った描き方をしたために却って皇帝の目にとまってしまったというのである。固定的な見方を排除し,魅力多い女性として描いたことで,のちに異民族からの尊崇を一身に受けることになるその生涯をより強く美しいものとして読み手を納得させるものとなっている。
快作と言えるだろう。