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mezalaのブログ

「長女」を聴く

 めずらしきこと。
 9月11日は,劇作家・阿木翁助の忌日である。日本放送作家協会会長を務めた著名な劇作家だが,調べてみると意外なほど音源が残っていない。残念なことだが,活動時期がやや早すぎたようで,放送されるラジオドラマはみな生放送だったのである。音源が残っているのは,多くの脚本のうちから再製作されたものだけだが,幸いなことに阿木翁助の脚本は多く出版されている。
 少ない録音の中から,「長女」を聴いた。

長女(再制作)
阿木翁助:脚本,水時富士夫:音楽.
上野友夫:演出.(NHK大阪
出演:山田清,幸田弘子,飯田恵子,関根信昭,内村軍一,松尾佳子
モノラル 30分.
[初放送:1947-07-12],再制作放送:1965-07-14{名作劇場},1982-06-27{ラジオ名作劇場}.
 母として家族の世話にあけくれ婚期を逸した長女と,恋愛結婚を望み父に反抗する次女。父は長女が不憫でならず,次女の結婚を許そうとしないのだ。長女は約束を交わした人がもうすぐ復員すると家族に告げ,自分の嫁入り道具を妹にもたせようとする。父は無邪気に長女を祝福するが…。
 阿木はこのドラマが初放送された昭和22年当時は教職に就いており,学校の宿直室で子どもたちと一緒に放送を聴いたそうである。戦後,全国各地の青年会では一斉に花が咲くように芸能活動が盛んとなり,戦争から解放された男女が上演できるような一幕物を書いて欲しいと頼まれていたという。理屈っぽく言うと,当時,日本においてまだまだ根付いていなかった民主主義の方向性を,演劇を通じて素直に伝えようとしたものだ。
 少ないが,手持ちの録音から。

  • 三人の若い俳優 初放送:1952,再制作:1966, 出演:中井啓介,米倉斉加年,阪口美奈子
  • 港 初放送:1957,再制作:1967, 出演:天野有恒;名古屋放送劇団.