目ずらし記事

mezalaのブログ

水仙

 めずらしきこと。

 水仙の季節である。水仙でふつう思い浮かべるのはナルキッソスなる美少年なのであろうが,自分はついついエコーを思い浮かべてしまうのだ。
 エコーは山のニンフで,どうでもよいことでゼウスの妻ヘラの怒りを買い,他人の喋った言葉尻を繰り返すことしかできない呪いをかけられてしまう。このどうでもよいことというのが,ゼウスの浮気相手を助けるためにヘラを相手に長話をしたことだった。自分の罪を隠すためでなく,山の仲間をかばってしたことで,そんな仕打ちを受けるわけで,なんとも気の毒な女性なのだが,ご多分に漏れず例によって阿呆な美少年に恋してしまう。しかし,言葉をかけてもらえなければ返せない,たとえ言葉を返したとしても語尾だけというのでは,自分を大いに賛美してくれる者しか眼中にない阿呆な美少年の目にとまるわけもない。
 かくしてエコーは悲しみのうちに肉体を失い,木霊だけの存在になってしまうのである。まぁ,ナルキッソスも呪いを受けて落命することになるのだが,生まれつきおしゃべりな少女が,自分の想いを伝えることもできずに儚く

 うあっ

 ここまで書いて,冷えた足をすりあわせたところ,家の中に侵入していた脚長蜂に刺された。ひどい痛みが左足の甲を貫く。

 ちと神への悪口が過ぎたのかもしれない。