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mezalaのブログ

作家・赤瀬川原平氏の逝去を悼む

かなしきこと.
作家で前衛芸術家の赤瀬川原平氏が昨日亡くなられた.心からご冥福をお祈りします.
なんとはなしに人の心を惹きつける魅力を持っていた人だと思う.赤瀬川氏が尾辻克彦名義で芥川賞を獲得したのち,自分は何故か,かつてそんなことは一度もしたことがないのに,書店に赴いて「父が消えた」の初版本を購入してきたのだった.今でも不思議に思うのだが,何故かそのときはそうしなければならない衝動に駆られたのだ.その初版本は今も自宅の本棚でそのひかえめな装丁にふさわしい静かなたたずまいを見せている.

尾辻克彦名義の連作短編集「肌ざわり」がラジオドラマ化されており,久々に聴き入った.
闇のヘルペス
尾辻克彦:原作,田槙道子:脚色,朝比奈尚行:音楽.
川崎清:効果,鈴木清人:技術,平野敦子:演出.(NHK東京)
出演:草野大悟,平田裕二,渕崎ゆり子,山田農,笹野高史大方斐紗子,中村方隆,大橋芳枝;岸田森(na). 演奏:朝比奈尚行&ひだまりハンモックス.
初放送:1981-05-09{FMラジオ劇場}, 再放送:1990-09-17{R2ラジオ名作劇場}.
モノラル 45分
今は亡き草野大悟と当時はまだ中学生くらいの渕崎ゆり子の掛け合いが,まるで本物の原平と胡桃子のように自然に脳裏を転がってゆく.怪優と呼ぶにふさわしい岸田森の語りも,日常に潜むわずかな恐怖のざらりとした「肌ざわり」を現しているかのように不気味に背後から迫ってくる.
「ラジオ名作劇場」は昭和40年代くらいのラジオドラマの名作を再放送する番組だったのだが,この枠で昭和50年代のドラマが再放送されることは滅多になく例外中の例外だった.なんと放送後数年で名作枠に仲間入りをしているのである.原作の面白さも特筆ものだが,何と言っても平野敦子の演出が秀でているのだろう.放送当時は幾度となく繰り返し聴き,いくつもの独特な表現を日常的に使っていたものだった.