目ずらし記事

mezalaのブログ

「ホル・ホレ・ホロ」を聴く

めずらしきこと。

自宅のある自治体では,平成25年度からゴミ収集の有料化が開始された。有料化と言っても,それほど厳密ではなく,燃やすゴミは指定袋(有料)に入れて週2回の収集日に出し,プラスティックゴミは透明袋に入れて週1回の収集日に出し,指定袋(有料)に入るサイズの燃やさないゴミは月1回の地域ごとに指定日に集積所に持ち込む,という具合である。
燃やすゴミの内の半分程度が生ゴミに当たる。そこで,まず生ゴミについては自宅で堆肥化することにして,最も簡単な穴埋め式で実施するための穴掘りを行った。


とりあえず,ニコ動かゲーム三昧でほとんど家の中に引き籠っている状態の倅に穴を掘らせた。普段からほとんど身体を動かすことをしていない倅は,すぐにへばってしまってグチグチと文句を言い,ため息ばかりついている。午前中から始めて,昼食で一旦中断し,午後も続けさせたが,穴掘りのコツを知らない倅には効率的な作業を期待できない。頸まで埋まる程度の深さまで掘らせようと思っていたところが,胸くらいまでで上がらせた。その後は自分の出番である。穴掘りというのは,人間,いや生物全般に共通する何か根源的な行為ではないかと思うくらい癖になる。村上春樹原作の「風の歌を聴け」の劇中劇でひたすら穴を掘る先輩のエピソードがあるが,とにかく脇目もふらずにひたすら土を掘るという行為は,知能のみ発達した弱々しい人類が穴に隠れて外敵から身を守りながら生き延びてきた日々を,遺伝子に焼き付けられた記憶として想起させるものなのかもしれない。


湿った土がシャベルの背を離れるときにたてる「しゅぽ」という音が作業のリズムとともに快感となり,どんどん掘り進めていくうちに頭上から妻の声がした。「おとーさん,なにやってんの!」
穴を掘っているに決まっている。しかし,気がついたら空が丸く切り抜かれているように見える。自分の身長より深い穴になっていたのである。「出られないんじゃないの?」と言われていささかむっとして穴の縁に手をかけたが,萎えた腕に力が入らないのと,粘土質の泥で足場が滑ってしまって這い上がることができなかった。一転,埋められるかもしれないという生命の危機を感じた自分は,脚立を伸ばして持ってくるよう妻に頼み,ようやく人類の過去の記憶から解き放たれたのである。
そう言いながらも,倅にカメラを持ってこさせて穴の中から見た空の写真など撮影しているわけだから,あまり大したことのない人類の記憶である。

ホル・ホレ・ホロ
黒井千次:脚本,みなみらんぼうジャイアント・ステップス:音楽.
村田幸治:効果,坂本好和:技術,多田和弘:演出.(NHK東京)
出演:河原崎長一郎佐藤オリエ那智武敏,中村伸郎,寺田路恵,矢島健一,松阪隆子.
初放送:1986-06-28{FMシアター}.
ステレオ 45分
穴掘り歌を唄いながらひたすら穴を掘る息子が掘り出してくるものは,父の過去の記憶そのものだった。意外に深くなってゆく黒黒とした穴を見ていると,その穴に吸い込まれていきそうで落ち着かない。さらに地中で生活している失踪した祖父に出会ったことで,父も地中の世界に引き込まれてゆく。
流石に腰が痛くなったので,立ったままアンメルツを腰に塗りつけていると,出すぎた液が尻の谷間に流れてゆき,肛門まで到達してしまった。その痛いこと。慌ててトイレに行って紙で尻を拭いたら,余計に塗りつけてしまう結果になったようで,さらに痛みが増してしまった。これではまるで体育会の合宿における精神的しごきに似た拷問ではないか。肛門だけに。「先輩,許してください。」
まともに歩けないほど痛いので,風呂で尻を洗ってようやく事無きを得た。涙がちょちょぎれていた。